スマートデバイスの法人導入に立ちはだかる壁

スマートフォンやタブレットといった、スマートデバイスの法人導入を考えるにあたって、乗り越えるべき壁はいろいろとあります。

iOSにするのかAndroidか、Windows8かというプラットフォームの選択をしなければ始まりませんし、導入時のキッティングをどうするのか、運用が始まった後のデバイス管理やソフトウェアのアップデートをどうするのか、セキュリティはどうなのか、BYODを認める場合はどういう仕組みで対応するのか・・・。考えると、キリがないほどです。

しかし、そういった、ある意味で技術的な要因よりも重要なのは、何に使うか、そして本当にユーザは活用してくれるのか?なのではないでしょうか。
そして、何より立ちはだかる壁は意外とユーザの意識かもしれません。

スマートフォンはキャズムを超えた

スマートフォンの個人への普及は、既にキャズムを超えて、アーリーマジョリティへの普及が進むフェーズに入っています。

アーリーマジョリティというのは、米国の社会学者M・ロジャースの採用者分布曲線で使われた言葉です。

Diffusion of ideas

■イノベーター(革新的採用者) 2.5%
冒険的で、最初にイノベーションを採用する

■アーリーアダプター(初期採用者) 13.5%
自ら情報を集め、判断を行う。多数採用者から尊敬を受ける

■アーリーマジョリティ(初期多数採用者) 34%
比較的慎重で、初期採用者に相談するなどして追随的な採用行動を行う

■レイトマジョリティ(後期多数採用者) 34%
うたぐり深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用する

■ラガード(採用遅滞者) 16%
最も保守的・伝統的で、最後に採用する

アーリーアダプター - @IT情報マネジメント用語事典 (割合は追補)

日経BPコンサルティングの「携帯電話・スマートフォン”個人利用”実態調査2012」によれば、2012年6月時点で国内のスマートフォンの普及率は18%。以降、さらに普及が進んでいると考えられることから、アーリーアダプターの域を超えて、アーリーマジョリティに浸透するフェーズに入っているといえます。

アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には「深く大きな溝(キャズム)」があり、このキャズムを乗り越えることが、市場のメインストリームになるためのポイントになります。
スマートフォンは既にキャズムを超え、メインストリームになっていると思われます。

いま採用すれば、法人としてはアーリーアダプター

スマートフォンやタブレットの法人への普及率は、2011年11月時点と少し古いデータになりますが、ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン株式会社の「企業のスマートフォン、タブレット型端末利用状況調査」によれば、スマートフォンを既に導入済みの企業が16%、導入予定が13%です。また、タブレットについては導入済みが12%、導入予定が13%となっています。

このデータから既に1年以上が経過していることを考えると、法人への普及についても既にキャズムを超えたのではないかと思われます。
いま、スマートフォンやタブレットを法人導入すれば、アーリーアダプターと位置づけられることになります。

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実際のユーザも本当にアーリーアダプターか?

しかし、その法人内で実際に使用するユーザを個人として見たときに、その人はアーリーアダプターなのでしょうか。

スマートフォンやタブレットは業務に特化したツールではなく、個人使用の方が多い一般的なツールであり、かつPCに近い汎用的なツールです。そのため、法人導入後に真に活用されるには、ユーザ自身が使おうとする気持ちや、創意工夫が重要ではないでしょうか。そのため、ユーザ自身の属性を知ることは重要と考えます。

この点については、当然に個別企業によって違いますので、包括的な調査や数字は存在しません。
実際に、現場に足を運んで状況を見るしかないのです。

一般論として言えば、若者が多い現場であればスマートフォンは比較的普及が進んでいるでしょう。
しかし、中高齢者が多ければその逆、つまり個人としてはレイトマジョリティやラガードではないかということが言えます。

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鍵を握るのはオピニオンリーダーの発見と育成

導入後に実際に活用してもらうという観点では、レイトマジョリティやラガードの人にどう使ってもらうかが重要になってきます。
もちろん、法人導入する以上は何らかの業務に関係してくるので、スマートフォンやタブレットを使わなければ仕事が進まないという、ある種の強制力が働くのは事実でしょう。
しかし、強制力だけとなってしまうと、せっかく導入したスマートフォンやタブレットの活用度合いが上がらず、投資対効果の観点で問題になることが予想されます。

そこで考えられるのは、一般的なマーケティングと同じ方策です。
つまり、

 レイトマジョリティは、世の中の普及状況を見る
  ↓
 つまり、アーリーマジョリティに普及しなければならない
  ↓
 アーリーマジョリティは、アーリーアダプターの意見を参考にする
  ↓
 つまり、アーリーアダプターが身近にいる状況を作らなければならない
  ↓
 アーリーアダプターは、自ら情報を集め、判断を行う
  ↓
 つまり、アーリーアダプターが「良い」と思うようなソリューションを提供しなければならない

というストーリーが成り立つのではないかと考えます。

ここから方策として挙げられるのは、

 アーリーアダプターから高評価を受けるソリューションの提供
 各拠点でのアーリーアダプターの発見と、オピニオンリーダーとしての育成

この2点です。

ラガードについては、かなり保守的なので、ある程度は業務上の強制力に頼るしかないかもしれません。ただ、いずれにせよ、レイトマジョリティまでは活用されている状況が浸透しなければ、ラガードが活用に動き出すことはないということです。

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。

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