ロボットやIoTでリアルの世界でロングテールを市場化する

移動時間ばかりの介護サービス

昨日、看護師の方と話をしました。その方は、いまは看護師としての仕事はしていないのですが、介護のバイトをしているのですね。具体的には、家庭に訪問して入浴支援をするとのこと。

首都圏でやっているのですが、移動時間ばかりで実際に仕事をしている時間は少ないのだそうです。8時間勤務して、4時間は移動時間とのこと。もちろん、その時間も時給は支給されるのですが、生産性は良いとはいえません。

でも、仕方ないのです。需要家が各家庭にいるのです。家庭での介護はむしろ奨励されていることだし、本人もその方が良いでしょうし。

逆セグメント化で市場を作る

マーケティングの考え方では、ふつう市場はセグメント化(細分化)して考えます。
とても大きな市場があるという前提で、そこには多くの企業が参加していて過当競争になっている。そこで、自社の勝てる領域を定義するために、市場を細分化するわけです。
細分化の方法はいろいろありますが、地域や年代、ニーズといった軸を使います。

でも、上記の介護サービスの事例では、セグメント化の方法をとるのは難しいように思います。
需要家が散らばっているので問題で、地域を限定することが出来ません。

散らばっている需要家を寄せ集めて市場を作っているわけです。

(別の切り口で、サービスを依頼するタイミングを地域ごとに集約することが出来れば良いので、例えば地域限定のサービスデーのようなものを設けるという方法はあるでしょう。)

リアルのロングテール

小さな需要を集約して市場を創るという考え方は、ネットの世界ではロングテールが思い浮かびます。
Amazonで取り扱っている書籍の種類は、街中の書店の比ではありません。
街中の書店では売れ筋しか店頭に置くスペースがないのですが、Amazonは倉庫に入れておけば良いので年に10冊しか売れないような本でも取り扱いが出来ます。年に10冊の需要でも、それが10,000種類あれば10万冊になるという考え方です。

Amazonがロングテール戦略がとれるのは、倉庫さえあれば良くて、ショーケースは単なるWebサイトですから、取り扱う本の種類が増えてもコストが増えないからです。
つまり、1種類の本ごとの売上が少なくてもコストが十分に小さいので、利益が出せるわけです。

売上を増やすかコストを減らす

市場を創るには、利益が予想できることが重要です。
利益を出すには、売上を増やすかコストを減らすしかないのです。

介護サービスではどういう方策があるでしょうか。

スモールシティ

一つの方法はスモールシティ化です。需要家の済んでいる地域を集約するわけです。
需要家が集約していれば、売上が増えることが期待できるし、移動時間が短くなるのでコストも減ります。

ただ、スモールシティは行政が実現するべきことであり、そこには移住者の同意が必要になるので、政治が解決するべき課題が残ります。

ロボットとIoTが鍵を握る

もう一つの方法は、ロボットやIoTを使ってコストを減らせないかということです。
例えば、ロボットを使うことで介護ヘルパーさんが2人必要なところを1人に出来ないかとか、体力の落ちた人でも働いてもらえるようにならないかといったことが考えられます。
IoTを使えば、センサーで健康に関するデータを取り、介護サービスが必要となるタイミングを予測したりするといったことも考えられるかもしれません。

この方法が良いのは、行政に頼らなくても、民間の力で出来ることです。また、技術の力で解決しているので、他の地域でも同様の方法が採れる可能性があります。

Amazonはネットの力を使うことでロングテールの市場化に成功しました。
介護サービスに限らず、ロボットやIoTを使うことによって、リアルの世界でのロングテールの市場化が出来るような時代になるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。