ITコーディネータとは何か(2)制度の成り立ちとIT経営

前回の記事で、ITコーディネータ資格が「知識」を問うものではなく「仕事の進め方(プロセス)」を問うものであることについて書きました。また、私がこの資格を取ろうと思うに至った道のりも書きました。

今回は、ITコーディネータという資格・制度は一体どういうものなのか。そして、ITコーディネータについて書くと良く出て来る「IT経営」というのは何なのかについて、書いてみようと思います。

ITコーディネータ制度の成り立ち

ITコーディネータ資格は国家資格ではなく、民間資格です。
ただ、「経済産業省推進資格」という言葉も付いているので、何か国家も関係してないこともなさそう・・・。

情報化人材対策小委員会の中間報告

「ITコーディネータ」という言葉の源流を遡ると、行き着くのは1999年6月に行われた通商産業省(現・経済産業省)産業構造審議会情報部会情報化人材対策小委員会の中間報告です。

具体的には、このような提言です。

①経営者自身の情報化投資に対する問題意識を高め情報化投資に必要な知識や事例に関する理解を深ること
②問題意識の熟した経営者に対して情報化投資を行う上で良きパートナーとなる ITコーディネータを育成・普及すること

この提言を受けて、IPA(情報処理振興事業協会、現・独立行政法人情報処理推進機構)経営情報化推進協議会が2000年2月に中間報告、パブリックコメントを踏まえて2000年10月には最終報告をまとめ、2001年2月にITコーディネータ制度が始まりました。また、その中核機構としてNPO法人ITコーディネータ協会が設立されています。

Itca
http://www.itc.or.jp/

現在の経済産業省の政策との関連

現在の経済産業省の政策との関わりは、情報化・情報産業の主要施策の一つである「IT経営の促進」において、下記のように述べられています。

経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)及び特定非営利法人ITコーディネータ協会では、中堅・中小企業が、外部環境の変化に的確に対応した経営改革をITの活用によって実現されることを期待して、金融機関、中小企業支援機関、情報サービス事業者、ITコーディネータ等専門家等民間機関及び公共機関等と連携を図り、平成16年度にIT経営応援隊(中小企業の経営改革をITの活用で応援する委員会)を設置しました。また、地域においては、各経済産業局がある9地域に地域IT経営応援隊を設置しました。現在、中小企業庁が公表している「中小企業IT推進計画 Ⅱ」の理念のもと、平成11年度から平成16年度まで経済産業省が取り組んできた戦略的情報化投資活性化支援事業(ITSSP)の成果を踏まえて、各地域において成功事例の輩出及び自立的・継続的に中堅・中小企業のIT活用による経営改革を支援するための環境を整備すべく、各種事業を展開していきます。

1999年の中間報告から始まった施策が、今も継続的に行われているということは、経済産業省の認識として、今もIT経営は十分に実現されていないということなのでしょう。(言葉の普及度はさておき、その実態として。)

IT経営とは

ITコーディネータ協会では、ITコーディネータのキャッチフレーズとして「IT経営を実現するプロフェッショナル」を使っています。
上記の経済産業省の政策にもあるように、「IT経営」という言葉がITコーディネータを理解するためのキーワードであることは間違いありません。

経済産業省では「IT経営ポータル」というサイトを公開しています。
このサイトの説明を読んでみましょう。

IT投資本来の効果を享受するためには、目的なく、単に現業をIT化するだけでは、不十分であり、自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
このような、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義します。

多くの企業では、経営、現業及びITの各領域が有機的連携をしない、若しくは、現業とITは好循環を維持しているが経営との間が分断している、などの悩みに直面しています。

経営とITの好循環確立に成功した企業を見ると、赤字化・合併等の事象を引き金に経営主導で取組を始めた例が多くなっています。しかし、引き金となる材料を自発的に得られる企業は現実的には少なく、全体の底上げに向けた対策が急務です。

ITコーディネータ・プロセス・ガイドラインでは、IT経営について「経営環境の変化に合わせた経営改革と、ITサービスの利活用により、企業の健全で、持続的な成長を導く経営手法である」と定義しています。

経営や業務の中で効果的にITを活用していくためには、自社のビジネスモデルをしっかり再確認し、必要に応じてビジネスモデルそのものの改革も行い、経営と業務をきちんと理解した上でのIT活用を図る必要があります。

しかし、特に中堅・中小企業では、必要十分かつ効果的なIT経営が行われているとは言えない企業が多数存在していると思われます。
IT経営を行おうとする経営者を、パートナーとして支援する人材が必要です。そのパートナーは、経営の知見とITの知見を持ち合わせ、ベンダーからは中立の関係でないと、有効な支援が出来ません。その役割を担うのがITコーディネータなのです。

まとめ

今回はITコーディネータ制度とIT経営について整理しました。
次回は、いよいよITコーディネータ・プロセスそのものについて、見ていきたいと思います。

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。