ITCケース研修が終わりました

今回初めてITCインストラクタとして臨ませていただいた、一般社団法人IT経営コンサルティング九州(ITC九州)でのITコーディネータ・ケース研修(2025年第1期平日コース)が、7月18日で終わりました。

今期からITCプロセスガイドライン(PGL)Ver.4.0に準拠した新たなケース研修となり、PGLだけでなくケース研修自体の作成にも携わることができたので、その思いをしっかりお伝えしたいという気持ちがありました。そのような場に関わらせていただいた皆さまに感謝致します。

今回の主任講師は私ということになっていましたが、実際にはこれまで長くケース研修に携わってこられたお二人のベテランインストラクタと分担して進めることができ、初挑戦となった私でしたが、安心して進めることができました。とはいえ、新ケース研修としては誰もが初めてであり、その点の不手際は多少なりともあったかと思います。その点は、受講生の皆さんにお詫び申し上げます。

ITCとしての伝統と革新

ケース研修は当然にPGLに準拠したものとして行われますが、一方でPGLはその名のとおり「プロセス」のガイドラインであり、具体的なフレームワークの使い方などが明記されているわけではありません。その点はケース研修が補っているわけで、今回の新ケース研修にはいままで組み込まれていなかったフレームワークがいろいろと登場しています。

そうした革新はケース研修だけでなく、PGL自体にもあります。サイクル型の考え方はPGL Ver.3.1以前にもありましたが、「サイクルマネジメント」がデジタル経営共通基盤の1つとして取り上げられるなど、今回はかなり強調した構成になっています。内製化を見据えた「開発」の登場は、ITコーディネータがメインターゲットとする中小企業においてもITは調達するだけでなく、必要に応じて内製することの重要性を訴えています。

一方で、ITコーディネータならではの成熟度の考え方(IT経営成熟度からデジタル経営成熟度と名前は変えましたが・・・)をはじめ、KGIとKPIの捉え方(状態表現へのこだわり)、経営者の思いに根ざした戦略策定プロセスなどは、初期のPGLから考え方をほぼ変えていないことを再認識しました。伝統は守られているということなのでしょう。(ある意味でPGLで育ったメンバーが革新したPGLならでは、ということなのかも。)

ITCは良い資格

ケース研修の最後に講師が順にメッセージを伝えたのですが、時間も足りず・・・であったので、改めてお伝えしたかったことを考えてみたいと思います。

ITCはITと経営の両方が分かる人と見てもらえる

私がITコーディネータを目指した頃は、ITエンジニアでしかありませんでした。今でもほぼ毎日のようにプログラミングをしていますし、ITエンジニアではあり続けているのですが、プラス経営についても話せる人ということになっています。(なっていると思います。)

というのは、自分がITコーディネータであるから、というのは大きいと思うのです。あと、なんだかんだとずっと自分の会社をやっているからかなと。

ケース研修にはITが強い人とそうでない人がいますが、ITに強くない人は別のこと(例えば経営)に強かったりするので、お互いが教え合えるグループワークの良さがあったりします。その後の自己学習も含めて、両方分かる人になっていくというのはITCの方向性だと思います。

ITCはコミュニティである

まずは、ケース研修で志を同じくする多くの人に出会えたというのは大切なことだと思います。それを大切にすることは重要です。

ITC25年誌でも大きく取り上げられているように、地域の届出組織という自発的なコミュニティがあってこそ、ITC制度は回っていることは、強調して、し過ぎることはないと思います。実際、ケース研修も届出組織がやっているのですしね。

そして、日本全国には6,000人以上のITコーディネータがいること、そのコアメンバーが集まるITC Conferenceがあって(コアメンバーだけを集めているわけではないのですが、カンファレンスに来る人はそれなりにITCへの思いがある人なので、結果的にコアメンバーになる)交流ができることも大切です。

ITCになっても更新をせずにやめてしまう人が多いのは知っていますが、ITC同士のつながりが広がっている人はやめないのです。そのつながりが新たな学びや、仕事につながっていきます。ただ、自分から動かなければ、つながりはできないというのも事実です。

ITCとしての自分戦略を考えてみる

ケース研修の場でも、ITコーディネータ協会の方で担当しているフォローアップ研修等の場でも、「ITCとしての活動はほぼ、できない(していない)のだけど・・・」とおっしゃる方は、とても多いのです。

そういう方には(そうでない方にももちろん)、ITCとしての自分戦略を考えることをやってみるとどうでしょうか?

これは、私が16年前に受けたケース研修で、課題として自分戦略をプレゼンするという機会があったのですね。そのプレゼンの様子は、今でも動画で持っています。

せっかくケース研修を受けて、経営戦略の策定やらその実行のプロセスや、使用できるフレームワークを学んだのです。その知識を活かして、自分自身のITコーディネータとしての戦略を考えるとどうでしょうか?

10年後もITCでいて欲しい

ITC25年誌の座談会でも言ったのですが、ITCの10年後をどう考えるかという問いに対して、少なくとも10年後もITCでいるだろう・・・と、思います。それだけの価値のある資格であり制度です。

世の中はどんどん変わっていく、10年後となるとITの存在価値も変わっていることでしょう。たぶん、ITの価値が今より低くなっていることはないでしょう。ただ、あまりに当たり前すぎてITという捉え方はされていないかもしれませんね。

そうした変化に対応するためにサイクルマネジメントが必要だ、というのがPGL Ver.4.0が述べていることなのですが、変化に対応するだけでなく、変化を提言し、作り出してく存在になることがITコーディネータ全体の大きな目標ではないかと思っています。

一緒に、頑張っていきましょう。

IT経営コンサルティング九州(ITC九州)のケース研修は、2025年11月から「2025年第2期・土日コース」を開講予定です。ITコーディネータ資格に興味をお持ちの方は、是非ご検討ください。
https://itc-kyushu.com/seminer/casetraining/

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社VIVINKO 代表取締役/VIVINKOコンサルティング 代表
経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア

AI・IoTに強いITコーディネータとして活動していたところ、2017年に北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に当時主催していたコミュニティで応募したアイディアが入選。2018年、株式会社ビビンコ(現VIVINKO)を北九州市に設立し、IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発を行う。2024年、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」を開発し、北九州発!新商品創出事業の認定を受ける。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。
一般社団法人IT経営コンサルティング九州(ITC九州)理事