ソフトウェアプラザでの生成AI連載の前半サマリー

10月から一般財団法人経済調査会様のソフトウェアプラザで、生成AIに関する連載コラム「生成AIが拓くデジタル経営」を執筆させていただいております。

全8回予定で、本日時点で5回目までが公開されました。残る3回分の原稿はこれから執筆というところですが、ここまでにどのようなことを書いたのか、まとめておこうと思います。

第1回 2025年の生成AI動向と企業導入の現在地

初回ということで、その時点での生成AI技術の動向と事例のご紹介を行いました。GPT-5、Gemini 2.5、Claude 4.5 Sonnet(Opusはまだ4)を取り上げており、Gemini 3 Proの衝撃や、それを受けたGPT-5.1から5.2への急激なアップデートはまだ起きていないという状態です。数ヶ月前のことなのに隔世の感があるのは、この領域ならでは、と思いますね。

ただ、この連載全体におけるメッセージとして、「主要モデルの性能向上、推論モデルの普及と実用化、AIエージェントの実装・運用への移行により、業務効率化のための補助的なツールから、業務変革を実現するパートナーへと進化する」ことを掲げ、ITコーディネータ協会が掲げる、データとITの利活用による変革で持続的な成長を実現する「デジタル経営」の実現を後押しする中核技術であると説明しています。

第2回 生成AIの基礎知識とサービス選定の方法

第2回では、いろいろなAIがある中での生成AIの位置づけと、特に認識AIと生成AIの垣根が崩れつつあることを説明し、その上でChatGPTやCopilot、Geminiといった生成AIサービスの選定方法について述べました。既存環境との統合を示す親和性や、ガバナンスといった観点では、Microsoft 365と連携するCopilot、Google WorkspaceにおけるGeminiは法人用途でもセキュリティがしっかりしており、ツール選定の第一候補になると思います。

結局のところ企業(特に中小企業)におけるデータ基盤とはOneDrive(Sharepoint)やGoogle Driveではないか?(さらに言えばOutlookやGmail)という気がしていて、そうしたクラウドスイートがAIエージェントの構築機能も提供しつつある中では、まずはMicrosoft365かGoogle Workspaceのどちらかがしっかり導入されていて、活用もされているか?というのが、AIを活用できるかどうかの分水嶺といっても過言ではないのではないか、と考えています。これは、この記事を書いた後にさらに思いを強めたことですが・・・。

第3回 AI活用におけるプロジェクトマネジメント

この第3回と次の第4回は、ITコーディネータ協会生成AI研究会が公開した(私がそのリーダーとして執筆陣の1人を担った)「中小企業向けAI活用ガイド」の概説を行っています。第3回は、ツール活用型とシステム開発型の2つの活用アプローチと、それぞれにおけるAI活用プロセスの進め方について説明し、まずはツール活用型におけるAI適用ポイントの見つけ方について述べています。

組織におけるAIの活用について考えると、ChatGPTやCopilot、Geminiといった生成AIチャットを中心に、社員の皆さん(実際にはAI活用リーダー的な人が中心になると思いますが)がAI適用ポイントを自らの業務の中で見つけながら、情報交換を活発化させることで浸透させていくという草の根の方法(これを少しプロセス化したものがツール活用型アプローチといえます)と、従来からのITシステム導入の延長線上で業務プロセスごとにSuD(System under discussion:検討対象システム)というかAIuD(AI under discussion)を定義して、AIを活用できるシステムを構築していくもの(つまりシステム開発型アプローチ)に分かれます。

後者のアプローチでは、解決策は必ずしもAIではなく、従来型のITシステムで充分であることも多く、AIを使うことを考えるというよりも、AIも含めてシステムを考えるということになります。つまり、AIについて考え出しても、AIがゴールにならないこともあるわけですね。それはそれとして、合理的な業務の進め方ができるようになるのであれば、問題ないと思います。

第4回 AI活用におけるセキュリティとコンプライアンス

第4回も、ITコーディネータ協会の中小企業向けAI活用ガイドをベースにした内容です。特に同ガイドの第4章で述べられているセキュリティとコンプライアンスについてまとめました。

問題意識としてあるのは、個人と組織の温度差、それから組織としてのガバナンスシステムの構築です。最近、いろいろなところで言っているのですが、組織としての生成AI活用のルールがないと、社員は使わない(ルールがないので怖くて使えない)か、勝手に使う(個人的に使っていて便利なので隠れて使う。シャドーAIともいう)のどちらかになります。前者はせっかくの生産性向上の機会を逸することになり、後者はガバナンスの観点で問題があり、どちらも良くありません。結局は、ルールをしっかり決めて、ガバナンスシステムを回していくことが必要です。特に、このガバナンスシステムはアジャイル型で進めることが大切です。世の中のAI技術やツールはどんどん進化していくので、一度決めたルールの固執していると使い物にならなくなったAIでも、ずっと使い続けることになってしまいます。また、社会のAI受容度(自社がAIを使って業務を進めていることを顧客や社会はどう受けとめるか?)についても適宜検討していく必要があります。

と、いうことでひとまず第4回までをまとめました。第5回も既に公開されているのですが、それは全8回までが公開された後に、まとめたいと思います。

記事の全文は、ソフトウェアプラザのWebサイトからご覧ください。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社VIVINKO 代表取締役/VIVINKOコンサルティング 代表
経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア

ITコーディネータとして、2016年からAIを業務に組み込む活動を続けている。2018年に株式会社VIVINKOを地元・北九州市で創業し、2020年に東京からUターン。生成AIを利活用するためのクラウドサービス「Gen2Go」を開発し、北九州発!新商品創出事業の認定を受ける。北九州市ロボット・DX推進センターでDXコーディネータとして中小企業支援に携わるほか、一般社団法人IT経営コンサルティング九州(ITC九州)の理事も務める。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。